農地を農地として購入・賃貸借するためには

3条許可とは、農地を農地のまま所有権移転、賃貸借する権利を設定するための許可です。わかりにくいので実例を挙げます。

①農家台帳を持ち現に耕作している農家の方が、耕作する目的で隣接する農地を買う場合(賃借する場合も同じ

これは比較的許可が出やすいケースです。買主の農家さんが3条で購入する農地を含めて3000㎡以上(市や区によって条件が異なるので注意)現に継続的に耕作されている場合、農業委員会の許可を得て農地を購入することが可能です。ただし購入した農地は原則農地転用ができず農地として耕作する目的でしか利用できません。(一部例外あり)

また新規就農に伴い3条で農地を購入することも可能ですが、面積要件はすでに農業をされている農家と同じです。申請時点で農家台帳がなくても3条申請は可能です。よく勘違いをしている方がいますが、農家資格=1000㎡以上、買受資格が購入する農地を含めて3000㎡以上が条件で、農家台帳のない方が農家台帳を作ろうとしても1年後でないと作れません。(営農実績が必要ということ)当然ですが農家として登録するためには自己所有・リースどちらでも可ですがトラクターや動噴、農用トラックなどの最低限の農機具を所有していることも条件となります。


ここで最も重要になります3条申請時における所有耕作(賃貸)している農地の下限面積を以下に記載します。

20アール・・・・浜松市天竜地区

30アール・・・・浜松市中区、西区、東区、南区、浜北区、北区三方原町、都田町 

40アール・・・・北区細江町、引佐町

50アール・・・・北区三ケ日町

※ここに記載の下限面積はずっと変わらないものではありません。申請時に市役所にてその都度確認してください。


また買主に法令違反(俗にいう無断転用)がある場合も3条許可は、出ません。

次によくお問合せをいただくケースで、3条申請ができないケースを挙げていきます。

②親から相続で下がってきた遠方にある農地を耕作管理することができないのでなんとかしたい。例えば亡父の兄弟が農地の近くに住んでいるので叔父に所有権移転したい。(叔父は農家ではない)

このケースはほとんどの場合、叔父は農地を取得できません。叔父が農地を農地のまま取得するためには叔父自身が農家である必要があるからです。では合法的に叔父名義にする方法はないのでしょうか?あります!ここでは長くなりますのですべてを記載できませんが、考えられる方法が2つあります。

次に、近年非常に増えている遺贈に伴う農地の移転についてです。

③遺言を作成して自己の所有する農地のうちA土地を相続人Sへ遺贈、農地Bを第三者であるTへ遺贈したい。遺言の内容は有効であるがこうした配分をした遺贈は可能なのか?

残念ですがこういった遺贈を伴う農地の配分は、許可が得られないため遺言として書くことができても実現することができません。Tが相続人の一人であれば相続するタイミングで遺産分割協議により1筆の農地を相続することは可能です。

しかしこのケースでTさんは第3者であるため、被相続人の持っている農地を含むすべての財産をTへ遺贈する旨の遺言がある場合のみ農地を取得することができます。(農地法許可は不要)


相続以外で農地が分散し、所有者が分かれてしまい営農に支障が出てしまうことは厳しく規制されています。その他にも競売にかかっている農地でも上記の規制の対象になっており、農地のまま欲しい場合は3条許可の見込みがあること、駐車場や資材置場への転用が前提であったとしても、転用の見込みのある方(要件を満たしている方)でないと競売になっている農地は落札できたとしても購入はできません。競売にかけられている農地を購入する場合はまず買受適格証明を得る必要があります。また入札のタイミングに対してこれらの手続きが間に合わない場合もありますので、十分にご注意ください。

このところ農地の時効取得について多く問い合わせをいただきます。インターネットで判例や他士業の方のホームページを見て、自分も買えるのではないか、いう方も多く見受けられます。確かに判例等では時効取得ができるとあるようですが実務に置き換えて考えた場合、農地法の許可を受けずに名義変更をすることは不可能であると考えます。